2021年にはじまったサイレントリーグ。コーチがベンチに入らないサッカー大会には、いったいどんな意味があるのか。
なぜ重要なのか?
「子どものリアル」サイレントリーグは、この7文字にすべての意味が集約されている。子どもの素顔が見られるこの大会は、いろんな気づきを与えてくれることが分かってきた。
以下の3つは、コーチの声でもっとも多かったものを要約したもである。
- 理想と現実のギャップ
- 子どもの個性が見える
- コミュニケーションの量が多い
サイレントリーグは科学的根拠のもと、周到に準備されてはじまったものではない。単に「コーチがベンチに居ないどうなるか?」この発想でサイレントリーグがはじまったことを最初に付け加えておきたい。
ギャップ
コーチには理想がある。こんなチームにしたいとか、こんな選手に育ってほしいとか、具体的な指導方法についてもそうだ。
しかし、だ。
そんなコーチたちの中にも、指導を考え直したコーチもいる。なぜなら理想に近づけていたと思い込んでいたのに、実際に自分が指揮しない状況では何もかもが違っていたからだそうだ。
▶︎いつものメンバー構成ではなく選手の配置も違う。しかも、ベンチを温存していた子どもが活躍している。
▶︎失点が続き劣勢になった時、なんの手も打てず時間だけが過ぎ、負けてしまいました。
理想と現実とのギャップに気づいたコーチは、かなり苦い思いをするだろう。しかしこの思いは必ず指導の力を引き上げる力になるはずだ。
個性
子どもの個性をいうものは、時に扱いがむずかしい。それぞれの個性を把握しているはずなのに、現場での扱いはそう簡単ではない。このサイレントリーグが対象とする、10歳の子どもならなおさらのことであろう。
では、子どもの個性はここでどのように発揮されてたのか、コーチの声を紹介したい。
- 思いもしなかった子がリーダーとなって、チームのまとめ役となってました。普段はどちらかというと、僕に叱られてばかりいるような子です。
- 試合結果を分析し、次の試合へ向けてのメンバー選定や全体でのミーティングを自主的に行なっている子がいました。
- 試合中、相手チームへの暴言やヤジの声が聞こえてきましたね。私がベンチにいる時はそんなことは無いんですけど…
コミュニケーション
「試合でこんなに子どもたちの声を聞いたのは初めてです」これは第二回サイレントリーグへ参加したチームの保護者の感想だ。
ハーフタイムや試合前後のチームミーティングはじつに興味深い。われ先に自分の意見を伝えようと、折り重なるように言葉が積み上がる。ミーティングが白熱し開始時間に間に合わないことは一度や二度ではなかった。
負けたチームのリーダーは、覚悟を決めたように仲間へ奮起を促す。また会話の端々に聞こえる専門用語は、きっと練習でコーチが繰り返し使う言葉だろう。
サイレントリーグでのコミュニケーション手段はさまざま。「試合でこんなに子どもたちの声を聞いたのは初めてです」子どものリアルという言葉が頭に浮かんだのはこの時だった。
まとめ
サイレントリーグは大人の口出しを一切無用としている。これは不変のルールとして変わることはないだろう。そしてサイレントリーグは回を重ねるごとに、変化し続けているもの事実だ。
フィールドに相談所を設けたのは子どもからの提案。また、午前と午後の間のフリータイムは、ある子のアイデアから生まれたもの。みんなが同じ時間出場するというルールを柔化させたのも、敗戦チームのミーティングに参加した時の質問がきっかけである。
私たちコーチに見えているようで、見えていないことは何なのか。このように規模のある大会を企画する必要はない。普段の練習でそっと彼らの傍に立ち、静かに見守ることからはじめてみてはどうだろうか。