サッカー女子U20監督狩野倫久氏のインタビュー記事から「高い技術力と判断力の緻密さ」そして「プレッシャー」をキーワードに、日本人選手の強みと課題を考える。
なぜそれが重要か?
世界に触れたコーチの言葉を検証することに価値を感じる。もしそこに何かのヒントが見つかれば、今の自分の指導にも新しさが必ずプラスされるはずだ。
まずは記事を一読いただきたい。
緻密さ
記事にある、高い技術力や判断力のうち、日本人選手の技術力の高さについて異論はないだろう。この技術力の高さは多くの外国人指導者も認める。日本人選手の動きはすばやく、その動きの中での正確なボール扱いは、緻密さをさらに強く印象付けている。
片や判断力についての評価はむずかしい。選手の思考を可視化するのは困難で、結果でしか評価できないことも多いからだ。
もしかすると、日本人選手の個の判断力に焦点をあてると、重要な課題が見えてくるかもしれないと考えている。その理由は以下、三要因の不足を指摘する多くの声である。これは育成年代に限らず、日本のトップカテゴリーへの評価とも共通する。
三要因
- 即時性
- 柔軟性
- 決断力
決められたことを実行する際の精度や規律について、日本人選手への評価は非常に高い。だが個の判断力に重要な影響を与えそうな、この三つの要因はどうやら不足しているように見えるらしい。この三つの要因は、試合の流れを変化させたり、決定づけたりするものだ。
これらの改善策についてはさらに深い検証が必要だろう。だが、もし普段の指導で気づくことがあれば、判断力の緻密さを高める可能性のある要因として検証してほしい。
プレッシャー
プレッシャーについては、物理的プレッシャーと心理的プレッシャーを挙げる。この二つのプレッシャーは、技術力や判断の発揮など、結果に重要な影響を与える。
物理的
まず物理的プレッシャーは、スペースや時間に関する量的部分を意味する。狭いスペースや限られた時間での技術や判断が求められる領域だ。
この物理的プレッシャーは比較的イメージしやすく、数値化することも可能だ。
心理的
次に心理的プレッシャーだが、その内容は多岐にわたる。代表選手としての責任感や絶対に勝たなければならない大一番の試合、またポジション争いなども、選手への心理的プレッシャーのしかかる。
そんな数ある心理的プレッシャーの中には特出すべきものがある。それは相手の挑発や駆け引きによるプレッシャーだ。このプレッシャーを受けると日本人選手は動揺し、冷静さをなくすと指摘するコーチはじつに多い。このある種のパニック状態に陥るのは日本人の弱点かもしれない。
先のオリンピックでは、このパニック状態は個人競技で見られることはなかったように思う。しかし団体競技、とりわけコンタクトプレーのある種目で見られたのではないだろうか。
まとめ
日本人選手の技術力の緻密さについてはだれもが納得できるだろう。しかもその平均的な技術力のレベルは非常に高い。しかしそこにプレッシャーが加わると、技術力への評価はすこし変わる。直接的な接触機会がある競技において顕著に現れる。言葉などによる挑発で心理的プレッシャーを受けた選手は、判断力が鈍り、試合結果に直接的な影響を及ぼすミスすることもある。おそらくこれは日本人選手の弱点と捉えることができるだろう。
最後に課題として、判断力を上げる3要因の改善と心理的プレッシャーの克服をあげる。これらは目に見えにくい領域のものだ。しかしこの二つの課題への改善努力は、試合をより面白くし、より豊な才能の芽を育てるための必須項目と考えている。そしてこれは世界基準だけの話ではなく、育成年代、ひいては草の根世代にも共通する重要な課題と捉えている。
もし気づく点があればぜひ検証してもらいたい。そして多くの仲間と議論を重ねてもらいたい。