指導者の問いとIリーグ

「なぜサッカーを指導しているのか?」この問いは、指導が行き詰まったり悩んだ時の自分への問いだ。とはいえ自分へ問うてもありきたりな答えしか浮かばず、さらに行き詰まることさえある。

昨年11月、ある試合会場で出会ったIリーグという高校サッカーのリーグ。なにかしら風景の違いがあったのか、その雰囲気に興味をひいた。

もしかするとこのIリーグは「なぜサッカーを指導しているのか?」の問いへの答えへ導いてくれるかもしれないと、そのとき考えた。

Iリーグ

審判を含め試合会場の運営は生徒が主導して行う。公式戦でも練習試合でもない、あくまで主役は生徒だという見え方は、非常にわかりやすい。そして指導者はすこし離れた場所で彼らの様子を見守っている。

このIリーグは愛知県の高校生を対象に、三年前に設立され、年々その参加数は増加傾向にあるという。

レギュレーション1

Iリーグの理念にある「レギュレーションは限りなく柔軟に」という文言をとても気に入っている。

たとえば予定していた試合が人数不足だったり、やたらと暑い日だってある。仮にリーグのレギュレーションが権威的でエラーを許さなければ、人数不足では試合が成立せず、酷暑下の試合では精神的苦痛は免れないだろう。

他方、Iリーグのレギュレーションは柔軟性が高く、これらの課題を解消している。このIリーグのように、柔軟性のあるカテゴリーも、こらからの時代に必要ではないだろうか。

Iリーグには2つのカテゴリーが設定され、そのどちらかを選んで参加することができるようだ。この2つのカテゴリー要項は以下のとおり。

育成ブロック

  • TOPチームの選手が出てもOK
  • 何人交代してもOK
  • 試合時間を変更してもOK

普及ブロック

  • 全日程消化できなくてもOK
  • 相手から借りてもOK
  • 大人が出てもOK
  • 再交代OK

実例

実際にあった例も紹介されている。

  1. 人数不足や夏場の試合などで、30分ハーフで実施した試合もあります。
  2. OBが出場した試合もあります。

生徒主導の現場の様子が分かる例もある。

  1. 審判はほとんど生徒たちのみで実施しています。
  2. ベンチに大人が一人も入らず、生徒たちに全て任せているチームもあります。
  3. 試合結果の報告や星取表の作成は生徒たちが中心になって実施しています。

まとめ

「なぜサッカーを指導するのか?」この問いは、長年指導している人なら一度は自分に問うたことがあるだろう。そして納得できる答えは見つからず、先の不安を感じた人がいるかもしれない。

この公式戦でも練習試合でもない場は、自分の指導を知ることができる絶好の機会だと思う。なぜなら、Iリーグでは指導の成果が選手の姿に顕著に現れるから。つまりは、選手の姿そのものが自分の指導を意味するからだ。その姿に喜びを感じるか、残念な思いをするかは人それぞれ。そして、そんな沸いてきた感情へ自分が向き合うことで「なぜサッカーの指導をするのか?」の答えへ近づいて行くかもしれない。

現在、高校生を対象にするこのIリーグを、中学生や小学生への導入を提案したい。上を目指す試合環境ばかりでは、子どもたちはどこかのタイミンで息切れを起こしてしまう。これからはIリーグのような柔軟性のある、地域に根を張るサッカー環境の育成にシフトし、今ある様々な課題に向き合うことが重要ではないだろうか。


  1. 規則や規制または規定などの意味を持つ英単語 ↩︎

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