「コーチがベンチに居ないとどうなるか」
8年前のある雨の日、ふと頭に浮かんだ言葉がきっかけで始まったのがサイレントリーグだ。サイレントリーグとは、コーチがベンチにいないサッカー大会のことである。
重要ではなかった
サイレントリーグを始めた当初は「どうなるか」の好奇心しかなかったように記憶している。ゆえにこの企画をそれほど重要とは考えてなかったのかもしれない。
しかしながら、サイレントリーグは広く認知されるようになり、3年ほど前からラグビーでも行われている。
重要ではなかったサイレントリーグ。回を重ねていくうち、次第に重要かもと思いはじめ、今では重要な上に意味があると考えるまでになった。
コーチの声
サイレントリーグで得たコーチの声で、多いものから順に1位から3位までを紹介したい。
1位:声の量が多い
ほとんどのコーチが口にする「声の量」が1位。いつもは物言わず寡黙な子がチームメイトを鼓舞する声も聞こえるという。
ちなみにこの声の量の多さについては、何人もの保護者が同じことを口にする。
2位:楽しそうにサッカーをしている
「楽しそうにサッカーをしている」が2位にランクイン。勝ち負けを意識した子どもたちの熱量は公式戦に劣らないほどの盛り上がりを見せる。
自分がベンチにいる時よりも、さらに躍動感を感じさせる子どもたちの姿に「正直、戸惑います」と話すコーチもいるほどだ。
3位:ポジションがちがう
「ポジションがちがう」が3位。コーチに与えられていた普段のポジションでプレーする子が一定数いる中、いつもとちがうポジションでプレーする子が大活躍することも少なくない。
さらには、コーチが入念に考え抜いた選手の並び(システム)までもが違っていて、これにはさすがのコーチも凹むらしい。
意味
サイレントリーグは子どもサッカーの意味を教えてくれる。その意味を理解することで、自分本意の考えが子ども軸へと置き換わり、これまで見過ごしてきた(あるいは見ぬふりをしてきた)重要なことに気づきをもたらすはずだ。
そしてこの変化はコーチの頭をより柔軟にし、指導にユーモアをもたらすことさえある。
存在
子どもたちにとってコーチは欠かせない存在だ。言うまでもないが。
だとしても、自分がなぜ子どもたちのコーチとしてそこに存在するかという、深い考えに至ったことが今まであっただろうか?
たぶん無いと思う
ただ子どもたちの姿を静観するだけでいい。そうすれば、自分が子どもたちのコーチとして存在する理由を知り、やがて自分の指導が浮かび上がるように見えてくる。
そして、そこで自分が目にする子どもたちの姿は、まさしく自分が積みあげてきた指導の成果であることに気づかされる。
子どもたちにとって欠かせないコーチという存在。その存在は、あなたが考える以上に深い意味をもち、子どもの未来に手を触れている重要な存在であることを忘れてはいけない。
あとがき
今回でサイレントリーグは最終回を迎えました。これまで参加いただいた各クラブのコーチ、保護者、そして子どもたちへ心より感謝いたします。また5年間支えていただいた宅建協会様をはじめ、サイレントリーグを取り上げていただいたNHK、朝日新聞、各メディア関係のみなさまへ御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
現在、新たなサイレントリーグを計画中です。また新しいサイレントリーグで皆さまとご一緒できることを心より願っています。